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 ついったで流したギリシャ神話冥王夫婦の掌編ですよ。
 インスパイア(いや重要フレーズ拝借したのでパクリグレーかな……)元は鬼束ちひろの名曲「私とワルツを」です。
 イメージ優先なので神話と食い違うのはご愛嬌ってことで。
 ペル→ハデとハデ→ペルの2編(前者はポエムです、もうちょっと長くしようかと考えたけどそのままにしときます。後者はほんのちょっとだけ手直ししました)。2編ていうか、これ2つでひとつだな。

 ペルセポネの名前の意味は「殺す女」と聞いていたのですが、「光を壊すもの」「目も眩むほどの光」の両方にとれるそうです。神と崇めるお方のサイト(※移転準備中)で知り、お願いしたところ快く使用許可を頂きました。ありがとうございます!(以前から存在する学説でもあるそうです)

 では続きに。

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私が冥府へ降りる度 あなたは「お帰り」と囁く
でも 私の名を呼んではくれない あなたがくれた名前なのに


私がここにいるせいで ここにいてもあなたは多忙
褥を共にする夜すら 数えられるほど
互いに言葉がうまくないから せめて肌で心を伝えあいたいのに


悲鳴のように私を呼んでよ 光を壊す冥府の女王
目も眩むほどのあなただけの光 「私のペルセポネ」と
そうしてくれたら 私はあなたに手を伸ばし
願うことができるのに 「どうか私とワルツを」と


恋すら知らぬ「コレー」を脱ぎ捨て 貴方しか知らない女になって
きっと 言うことができるのに

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「――ペル……っ」
 いけないと思うのに口にしかけてしまった。
 彼女はこの名を嫌っているのに。あれほど泣いていた、冥府に攫ってきたときに、この名を与えたときに。
 今までずっと耐えていたのに。何度目なのかももうわからない冬の終わり、別れ際。
 なのに彼女は振り向いて、こう言った。ほんの少しだけ微笑みながら。

「次の冬に、私はまた帰ってくる」
 帰ってくると、はっきり言った。
「だからその時、私の欲しい言葉を頂戴。きっとあなたと同じもの」
 私がその言葉に戸惑っているうち、彼女は地上へ上っていってしまった。

 欲しい言葉。

 今更私からの解放とは思えない。
 彼女は光を壊す冥府の女王として、冬の間その職務を文句ひとつ言わずこなし、死者や裁判官たちに微笑み、言葉を交わす。
 しかし宝石や、豪奢な衣に目を輝かせることは一度もなかった。むしろそれを与えようとする私を悲しげな瞳で見つめるだけだった。

 欲しいのは言葉だという。
 私が欲しがっているのと、きっと同じ言葉だと。

 私は彼女に呼んで欲しかった。
 他の忌み名などではもちろんなく、「冥王」でもなく、「私の王」でもなく、ただ、ハデス、と。
 愛しているという言葉は私には過ぎたものだ。
 だから名だけでよかった。ハデス――ハデス。呼んで欲しかった。


 冬が来る。

 彼女が帰ってくる。
 結局他に思い浮かびはしなかった。

「帰ってきたわ、私の王」
 彼女はいつもと同じように、あまり感情のこもらない声音でそう告げる。

「ペルセポネ」

 私は答えた。
 与えておきながら呼べなかった名を。
 また拒否されるのが怖かった。
 世の三分の一を、地下すべての財を持っていようと、冥王の座にあろうと。
 私はただ彼女の前では、震えて拒否に怯える、恋する一人の男でしかなかった。
 君がまたこの名を嫌がり泣いたなら。
 解放しよう。
 もう――帰ってこなくていい。

「おかえり、私のペルセポネ」

 もう一度呼んだ。
 悲鳴のように震えた声で。
 愛しい妻の名を。

「ええ、帰ってきたわ、私のハデス」

 ハデス、そう言って、彼女は微笑んだ。
 そうして私に手を伸ばし、告げた。

「ハデス。どうか、私と――」

 ペルセポネ。ペルセポネ。
 君もそうだったのか。
 だから同じ言葉だと。
 君は破壊者だ。私をこんなにも壊してしまった。そしてこれからも壊してゆく。
 ペルセポネ。目も眩むほどの、私だけの光。ペルセポネ。


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「好きすぎて名前も呼べない(いろんな意味で)」相手が絞り出すような声で名前を呼んでくれる、と言うのは私にとって男女どちらから見ても非常に萌えなのです。
 BASARAの魔王夫妻も(力関係違うけど)そんな感じで萌えています。
 ぴくしぶには気が向いたらそのうち投下します。

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