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リクエストいただいてましたヤンデレ語りです。
実はスクイズはTV版しか知らないのですが、ヤンデレブームの火付け役にして未だヤンデレクイーンとして君臨する言葉様をベースに、女ヤンデレについてつらつらと書いたものです。直球でいいますが、肉体構造上どうしようもない、「女=犯される側」がヤンデレるのと、「男=犯す側」がヤンデレるのは私の中では微妙に違ってて、「犯される側がヤンデレる」ほうが好きっぽいんです。(こんなんたたむ前に書いてますが内容にセクシャルなものは書いとりませんよ)

では続きよりどうぞー。

 ちょっと蛇足かもしれない前段。
 生きるってことは他者の犠牲が必要なんですよ。生きようと思うなら食事しないとダメですよね。要するに他の命を食らうことで生きてるんです。その前にはイルカもクジラも牛も豚も犬も野菜も変わらんのです。この辺言い出すとクジラ教徒に対する罵倒が止まらなくなるのでやめときますが。
 またそれは食事に限りません。受験とか就職活動とかコンペとか。他人蹴落とさないと社会的に生きていけない。選ばれ続けなければならない。
 で、バブルの一億総浮かれポンチの「自由恋愛って素晴らしい」という現在まで根強く残る恋愛至上主義、「一度も恋人のいたことがない人間は頭が良くても仕事ができても所詮選ばれなかった人間」という価値観が、自分大好きなサカっとるだけのバカ(ひいてはクソメンヘラ)を増加させ増長させている。個人的にはこの時代背景、ヤンデレブームに結構影響与えてると思います。
 
ヤンデレ語りここから↓

 ヤンデレになるのはそもそも何らかの面において非常に弱い存在です。コンプレックス強いです。気が弱い、立場が弱い、空気読むのが苦手、いちいち発言が重い、逆に高嶺の花と遠ざけられてきた等々、そう言った部分の結果としてコミュニケーション能力をうまく習得することができず、集団からはじかれ、孤独に生きてきた。それに耐えられる人間はほんの一握りです。誰だって承認欲求を持っているのです。恋愛至上主義の洗脳の中、三大欲求の一つである性欲に根差した恋愛が絡むとなればなおさらでしょう。

 そんなつらい日常で、ふと投げかけられた好意。
 
「あなたは欠点もあるけどそれも含めてあなたでいい、私はあなたを選び、あなたという存在を望む、あなたはここにいていいんだ、私の隣にいてほしいんだ」
 
 孤独の中、劣等感だけを抱えて生きてきた人間に、それがどれほど眩しい光となるか。常に「犠牲にされる側」だった自分を明るい世界へ連れて行ってくれる救世主。生きているのかいないのかわからない、生の実感を持てなかった自分を人間にしてくれた。どうしてその救世主を裏切ることができるでしょうか。救世主のためならば何もかもを捨ててもいい。「私を人間にしてくれたあなた」より大切な存在など、天秤にかけるに値するものなど存在しない。
 それまで孤独で、犠牲にされ傷つきながら生きてきた分だけ、初めて得た「選び選ばれる喜び」を忘れ捨て去ることなどできない。なればこそ、その喜びを、それを与えてくれた愛する人を守るために、その人のために、彼女らは何もかもを犠牲にできる。

 
 ヤンデレは愚かです。傷つくのが怖くて狭い自分の世界の中に逃げ込み、そのくせそれでもまだ傷つき、自らの傷に夢中になるあまり世界が見えていません。「自分も誰かを傷つけて生きていた」という感覚が彼女らにはない。しかしだからこそ何もかもを捧げられる。自分を愛してくれた分だけ、いやそれ以上に対象を愛し返し、どんな求めにも懸命に応えようとし、かつ愛情以外の対価など一切求めません。高価な物品も周囲からの称賛も必要としません。だってそんなもの今まで触れたことがなかったから。知らないから求めないでいられるし、知っていたとしてもそんなものよりずっと尊いものがあると彼女らは知っている。ただ対象が最初に与えてくれた「あなたは自分にとって特別で必要な存在なんだよ」という言葉、あるいはそれを表す行動のみを求めます。愚かだからこその強みでしょうか。
 そして愚かゆえ、彼女らは謀略を用いません。障害物は自らの手で排除します。自分が手を汚すことなどどうでもいいのです。そんなことよりも愛する人が大切だからです。彼女らは世界中すべての人間を敵に回すことになっても、愛する人のために戦うでしょう。愚かさゆえの、覚悟です。
 
 ヤンデレはフィクションの中でのみ存在を許されるものです。どんなに弱くても、生きていこうと思うなら強くなろうとしなければいけない。自身と愛する対象を阻む存在であっても犯罪行為をもって排除してはいけない。どんなに純粋で健気で一途であっても、彼女らの行動は方向性を誤っているものですから。
しかしその誤っているゆえに破滅にしか帰結しえない、それでも、あるいは破滅する未来すら見えないほど対象を愛し求める姿は時代が変わろうとブームが終わろうと一定の人間を魅了し続けることに違いはないでしょう。
 
 ……ここまで書いて気づいたんですけど、オスカー・ワイルドの「サロメ」って「我が理想のヤンデレ観」からはちょっと外れてるんですよね。でも心惹かれてやまないのは、紡がれる言葉の美しさとそこから生まれる倒錯的で耽美で淫靡な雰囲気が突き抜けてるからかな。それに首だけになっても「恋しているのはお前だけ」とまで言い切れる神経は自分しか大事じゃない甘っちょろいメンヘラとは格が違うからなー。
 TV版スクイズ最終話で誠の首を抱きしめながら、可憐としか形容しようのない美しく慈愛に満ちた声で「やっと二人きりですね、誠君」と幸せを噛みしめる言葉様は、淫靡さなど欠片もなく、むしろ清廉な女神に見えました。でもどっちも好き。
 
メンヘラについても語ってみようかと思ったんですが、長くなるので蛇足気味な比較だけ書いときます。
 
ヤンデレ→対象への一途な愛情、献身。犯罪も厭わない、その際自ら手を汚す(言葉様)
メンヘラ→対象はアクセサリー、「好かれてる自分」が好き、自分しかいない・障害を取り除くには謀略を用い、嘘を平気で吐き、自らの手は決して汚さない・覚悟がないので露見した場合「私は悪くない」と被害者面(スクイズ世界、ガラかめ鷹宮紫織)

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