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本日2つ目の記事でゲス。
ゆやさんが気に入ってくださったようなので、調子のって高校生パロヴァルフィリ+ガ様ネタを一本。
漫画が描けるといいんですけどね……気力続かんのでね……テキストで。
パラレルで軽めのテキストは今後もここに(思いつけば)書いて行くと思いますです。

続きからどうぞー。
勢いだけで書いた割に思ったより長くなった。
注:私の書くガ様は不良じゃなくてナチュラルにそこそこの優等生です。ぼくのかんがえたさいきょうのがんだむ。
タイトルは深く考えないでください。おもいつかなかったの。


「料理?」
「はっ、はい、その、私ももう高校生だし料理のひとつくらいできないとって思い始めたんですけど、母はその……なんか忙しそうで手際の悪い私が入ると却って邪魔になりそうだし、でも料理教室に通えるほどお小遣いももらってないし、それでガーヴさんに教えてもらえたらと思って」
偶然出会った学校帰り、着ているセーラー服と同じくらい白い頬を真っ赤に染めてフィリアが縮こまりながら早口にそう言った。
「構わねぇよ。オレもそろそろ受験勉強始めたいしな。お前さんがおさんどんしに来てくれると助かる」
なんでもないふうにガーヴは答えた。強面と、「切りに行くのが面倒くさい」と伸ばしていたらいつの間にか腰に届くようにまでなってしまった長髪のおかげで不良に見られる率が95%を超える彼だが、両親が共働きだったせいで家事全般はお手の物。ブレザーの制服こそ着崩しているが、地元では評判の進学校に通いそこそこの成績を修めてもいる。高校進学と同時に両親が長期の海外出張に出てしまったため、もう三年近く、家事を一手に取り仕切っている。毎日作る弁当も、正直そこらの弁当屋のものより手が込んでいる上に美味い。
「ほっ、本当ですか!?」
「おー。好きなだけ来い。毎日メニュー考えるのも大変でなー。作りたいもんとかあるか?」
「え、えっと、そうですね……」
「ヴァルは肉なら何でも好きだぞ。ただなー、あいつ野菜食わねーんだよ。ピーマンなんか、未だにみじん切りにしてハンバーグに混ぜてやらねえとダメ。あいつに本気で食わそうと思うと、料理の腕はけっこー上がるぞ」
「わっ、私は別にヴァルの好みを聞いているわけでは」
「ウチで作るってことはあいつにも食わすワケだろ」
「そっ、そうですけどっ……」
ますますフィリアは真っ赤になる。ポーカーフェイスを気どったが、ガーヴの目元はどうしても笑ってしまう。
ガーヴが中三、腹違いの弟のヴァルガーヴが中一になった四月に、近所に引っ越してきたそれなりにお嬢様のフィリアは、ぽやーっと天然に見えてトロい部分もありながら芯が強く、なかなか向こうっ気の強い性格だった。両親の不在が多く、兄と母親が違うということで小学校までいじめられることも多かったヴァルガーヴが中学デビューに失敗してグレずにすんだのは、ガーヴの拳骨と、生真面目なフィリアのおせっかいのおかげだ。鬱陶しいとぶちぶち言いながらも、いつのまにかフィリアが気になって仕方なくなっている弟に、「変な虫がつかないように見張ってやれ」と尻を叩いて勉強させ、フィリアと同じ高校に半強制的に入学させたのももうひと月前になる。そんなヴァルガーヴは高校デビューにも失敗し、学ランこそ短ランに改造したが、「フィリアがうるさいから」と襟のカラーは常にきっちり、煙草とも酒とも夜の繁華街とも無縁な生活を送っている。
「あー、そういえば、焼き魚も苦手だな、アイツ」
「お魚もですか?」
「いや、魚は食うことは食うんだけど、骨避けるのがものすげえヘタクソなんだよ。ハラワタ残すのはともかく、身も大量に残ってて汚いのなんの。何べん教えても上達しなくてなー。オレはもう疲れた。代わりに教えてやってくれ」
「うーん、私もお魚の骨を避けるの、あんまり得意じゃないんですけど……」
それ以前にヴァルは、私の言うこといつも聞いてくれなくって、とフィリアが愚痴モードに入る。聞いてくださいよガーヴさん、今日なんかね――と言いながら、髪の隙間から少しだけ覗くフィリアの耳は赤い。これは彼女が内心嬉しがっている時の特徴だ。実はヴァルガーヴに教えてもらったのだが、とりあえず今のところはまだ黙っている。
そこまで観察されていると知ったら、このお嬢さんはどれだけ真っ赤になることやら。料理だってヴァルに食べてもらいたいだけの癖に、別に隠さなくてもいいものを。いやー、青春だねえ。
思わずポーカーフェイスが崩れてにやついたガーヴの口元を見て、フィリアは「もう、聞いてくれてるんですかっ」と握り拳で肩を叩く。あー、こんな光景ヴァルに見られたら、あいつどんな顔するだろーなー。
そう思いながら角を右に曲がると、自動販売機の前で缶ジュースを飲んでいるヴァルガーヴがいた。
「兄貴! ……って、なんだ、フィリアも一緒かよ」
「なんだなんて言わなくてもいいでしょうっ」
「おー羨ましいだろ。今日はオレがお姫さんの騎士役だ」
「羨ましくねーよバカ兄貴! どーせ帰り道で偶然会っただけの癖に」
「おー、さすがフィリアの事は言わなくてもわかるんだな」
「違う!」
にやにや。
「偉いわねヴァルガーヴ、歩きながらジュースを飲むのはお行儀が悪いし危ないからって言ったの守っててくれてるのね、嬉しいわ」
「……っ! あんたに見つかったらまたうるさいからやめただけだっ」
にやにやにやにやにや。
「……なににやついてんだよ兄貴」
「いーやなんでもない。なんでもないぞー」
「その顔は何でもないって顔じゃない」
「なんでもない」
「兄貴がその顔してる時はなんでもなくない。フィリアの耳が赤い時は怒ってるように見せて嬉しい時と同じくらいなんでもなくないっ」

「えっ」

「!」

あーああ、言っちまいやがった。にやにやにやにや。

「え、あの、ヴァル、それは」
「なんでもない! なんでもない! なんでもない! フィリアはちょっと黙ってろっ」
「え、私、耳が赤くなるんですか……っ?」
「しらねー! 俺はしらねー! 帰るぞ兄貴!」
にやにやにや。
「いつまでもにやついてんなっ」
がしっ。ヴァルガーヴの右ストレートを、ガーヴはなんなく左手で受け止める。
「~~~~~~~~~っ」
「オレに一発入れようなんざ十年早い」
にやにや。
「あーっ! もう! 俺先に帰る!」
だっとヴァルガーヴが背を向けて走り出す。
「こけんなよー。あー、あと、夕飯はお前の好きなハンバーグだからなー」
「知るかーっ!!」

「……」
「というわけで」
「はい」
「今日の夕飯はハンバーグに決定だ。ただしピーマンはいつもの倍」
「はい」
くすっ、とフィリアは笑う。贔屓目抜きにして、フィリアの笑顔は花がほころぶ様のようだとガーヴは思う。このお嬢さんがいてくれりゃ、うちのバカ弟は大丈夫だ。
「五時ごろになったらうちに来い。材料は準備しとくから」
「わかりました」
じゃあ、とフィリアは手を振り、少し先を行って角を曲がる。フィリアが料理修業に来ることは秘密にしとこう。にやにや。なんで来るんだよ、俺もうしらねー、フィリアが料理できようができまいが俺はしらねー、そんな反応が目に浮かぶ。そしてしらねーしらねーと言いながら、多少できが悪くても残さず食べるに違いない。兄の苦労と楽しみがまたひとつ増えた。ヴァルガーヴも、たぶんフィリアも気づいていないが、ヴァルガーヴが「しらねー」を連発するのは、思いっきり照れているときだと、ガーヴはよーく知っている。






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ガ様に料理を習いたいのは、ヴァルに食べてもらいたいのはもちろん、ヴァル好みの味付けを教わりたいからです。

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